オフィスの木質化を検討しはじめると、必ず2つの壁にぶつかります。1つは「内装制限に引っかかるのではないか」という法令の不安、もう1つは「木にする理由を稟議でどう説明するか」という社内説得の問題です。

この2つは、調べ方がまったく違います。前者は建築基準法の条文を読めば線引きがはっきりしますし、後者は法律が定めた国の方針と、CO2固定量という数値で説明できます。このページでは、その両方を条文と官公庁の資料から整理します。木を売る側として都合の悪い点も書きます。

1. 「オフィスの木質化」は3つに分かれます

木質化という言葉は、実務では中身の違う3つを指しています。ここを分けないまま社内で議論すると、費用も法令のかかり方も噛み合いません。

やり方 中身と性質
内装の木質化 壁・天井・床の仕上げを木質材料に変える。建物の内装仕上げそのものなので、建築基準法の内装制限がかかる領域。原状回復義務のある賃貸では実施しづらい
造作家具による木質化 カウンター・収納などを建物に固定して造り付ける。固定の度合いによって、建築物の一部と評価される場合がある
置き家具による木質化 テーブル・ベンチ・キャビネット・間仕切りなど、床に置くだけの家具で木の面積を増やす。建築物の内装仕上げではないため、内装制限の対象外。退去時に持ち出せる

賃貸オフィスで現実的に選べるのは3つ目です。当社が扱っている天然木のオフィス家具もここに当たります。

2. 木質化は「推奨」ではなく、法律に根拠があります

木質化を「流行」や「イメージ戦略」として説明すると、稟議では弱くなります。実際には、事業者の努力義務として法律に書かれています。

2-1. 根拠となる法律

根拠は、脱炭素社会の実現に資する等のための建築物等における木材の利用の促進に関する法律(平成22年法律第36号)です[1]。もとは公共建築物を対象とした法律でしたが、令和3年10月1日施行の改正で対象が民間建築物に広がり、題名も現在のものに変わりました。「都市(まち)の木造化推進法」とも呼ばれます。

同法第六条は、事業者について次のように定めています。

事業者は、基本理念にのっとり、その事業活動等に関し、木材の利用の促進に自ら努めるとともに、国又は地方公共団体が実施する木材の利用の促進に関する施策に協力するよう努めるものとする。

努力義務であって罰則はありません。そこは正直に書きます。ただし「法律に書かれた事業者の努力義務に沿った取り組みである」と説明できるかどうかは、稟議書の説得力をはっきり変えます。

2-2. 10月は「木材利用促進月間」です

同法第九条は、10月8日を「木材利用促進の日」、10月1日から31日までを「木材利用促進月間」と定めています[1]。十と八を組み合わせると「木」になることに由来します。

社内外への発信を伴う施策であれば、この時期に合わせると趣旨が伝わりやすくなります。意外と知られていない条文です。

条文 内容
第六条(事業者の努力) 事業活動に関し、木材の利用の促進に自ら努める
第九条(木材利用促進の日) 10月8日が木材利用促進の日、10月が木材利用促進月間
第十五条(建築物木材利用促進協定) 事業者が国または地方公共団体と協定を締結できる

3. 内装制限は、どこまでかかるのか

ここが最大の分岐点です。結論から書くと、置き家具には内装制限はかかりません。内装制限は建築物の「内装の仕上げ」に対する規制であって、家具は仕上げではないからです。

3-1. 条文の構造

内装制限は建築基準法第35条の2を受けて、同法施行令第128条の4と第128条の5が具体的に定めています[2]。かかる相手は、劇場・病院・物品販売店舗などの特殊建築物、一定規模以上の建築物、火を使う設備のある室などです。

重要な点が2つあります。

  • 事務所は、建築基準法別表第一に挙げられた特殊建築物には含まれません。用途を理由とした内装制限は、原則としてかかりません
  • ただし階数・延べ面積による規制と、火を使う室(給湯室・厨房など)の規制は別建てで残ります。令第128条の4第3項・第4項が該当します

3-2. 内装制限がかかる場合でも、壁の下部は対象外です

見落とされやすい規定があります。令第128条の5第1項は、内装制限の対象となる壁について「床面からの高さが1.2メートル以下の部分を除く」と明記しています[2]。

つまり腰壁の高さまでの木質化は、内装制限がかかる部屋でも成立する余地があります。全面を諦める前に、ここを確認する価値があります。

対象 求められる仕上げ
居室の壁(床から1.2m以下を除く)・天井 難燃材料。3階以上の階に居室がある建築物のその天井は準不燃材料
地上に通じる主たる廊下・階段・通路の壁と天井 準不燃材料
置き家具(テーブル・ベンチ・収納・可動間仕切り) 建築物の内装仕上げではないため、この規定の対象外

ただし、可動間仕切りを床や壁に固定して造作に近い状態にすると、壁として評価される可能性があります。当社は「家具だから何をしても法令上問題ありません」とは申し上げません。固定を伴う計画の場合は、設計者またはビル管理会社を通じて特定行政庁(多くは自治体の建築指導課)にご確認ください。

4. 稟議では「CO2固定量」で説明すると通りやすくなります

木質化の効果は、快適性や印象といった定性的な説明になりがちです。そこに1つだけ数値を入れると、稟議書の性質が変わります。

樹木は成長の過程で取り込んだCO2を炭素として木材の内部に固定し、燃やされない限り固定されたままです。したがって木製品を長く使うこと自体が、CO2を建物の中に貯めておく行為になります。

当社は、ご提供した国産木材の量に応じて植樹を行い、カーボンニュートラル貢献量証明書を発行しています。固定量・吸収量は林野庁が公表している計算方法に基づいて算出し、証明書の裏面には木材の産地明細を記載しています。算出根拠と記載例はカーボンニュートラル貢献量証明書についてにまとめています。

サステナビリティ報告や統合報告書に載せる数値が必要な場合、この証明書がそのまま根拠資料になります。

5. 国・自治体と協定を結ぶ選択肢もあります

一定規模以上の取り組みであれば、建築物木材利用促進協定という制度があります。前出の法律第十五条に基づく制度で、建築主である事業者等が国または地方公共団体と協定を結び、木材利用に取り組むものです[3]。

林野庁は、建築主となる事業者側のメリットとして次を挙げています。

  • 協定がホームページで公表されることなどにより、環境意識の高い事業者として社会的評価が向上する
  • 木材利用による炭素固定など環境保全への貢献が、ESG投資など新たな資金獲得につながる可能性がある
  • 国や地方公共団体による財政的な支援を受けられる可能性が高まる(一部予算事業における加点等)

対象は建築物が中心で、家具の導入だけで締結できる制度ではありません。内装や建物に踏み込む計画がある場合の選択肢として知っておくと、社内の提案の幅が広がります。都道府県ごとに相談窓口が設けられています。

6. 進め方:確認の順番を間違えないこと

この順番で進めると手戻りが出ません。

  • 固定するかどうかを先に決める。置くだけなら、内装制限の論点はほぼ消えます
  • 賃貸であれば原状回復の条件を確認する。内装の木質化は退去時の費用に直結します
  • 内装に踏み込むなら、ビル管理会社と設計者に内装制限の有無を確認する。部屋の用途・階数・規模で結論が変わります
  • 木質化する面積と場所を決める。視界に入る面を優先すると、少ない量でも体感が変わります
  • CO2固定量など、報告に使う数値の出し方を決めておく。導入後では産地情報を遡りにくくなります

7. 木質化で現実に起きる不都合

良い面だけを書くと判断を誤らせるので、不利な点も挙げます。

起きること どう扱うか
無垢材は乾燥・湿度で反りや割れが生じる 均質さが最優先の用途には向きません。経年変化を許容できる場所から始めます
傷や汚れが樹脂化粧板より目立つ 木は補修できる素材です。使用年数とメンテナンスの前提を先に合意しておきます
オーダーメイドは納期がかかる 当社は全品オーダーメイドの受注生産で、最短1.5か月です。移転の工程からは逆算が必要です
既製の量産家具より単価が上がる 耐用年数と更新回数で比較してください。短期の費用だけでは判断材料になりません

8. 実際の導入例

当社が扱う製品の導入事例を公開しています。会議室・フリースペース・シェアオフィスなど、木質化した場所と使い方がそれぞれ違います。

製品は全商品一覧からご覧いただけます。実物を確かめたい場合は体験型ショールームをご利用ください。

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よくあるご質問

Q. オフィスを木質化すると建築基準法の内装制限にかかりますか。

A. 壁・天井・床の仕上げを変える内装の木質化は、建物の用途・階数・規模によって内装制限の対象になります。一方、床に置くだけの家具は建築物の内装仕上げではないため、この規定の対象外です。事務所という用途自体は建築基準法別表第一の特殊建築物に含まれませんが、規模による規制と火を使う室の規制は別に残ります。

Q. 内装制限がかかる部屋では、木は一切使えないのですか。

A. そうとは限りません。建築基準法施行令第128条の5第1項は、対象となる壁について「床面からの高さが1.2メートル以下の部分を除く」と定めています。腰壁の高さまでであれば成立する余地があります。実際の可否は設計者と特定行政庁にご確認ください。

Q. 木質化に法的な根拠はありますか。

A. あります。脱炭素社会の実現に資する等のための建築物等における木材の利用の促進に関する法律の第六条が、事業者について「事業活動等に関し、木材の利用の促進に自ら努める」と定めています。努力義務であり罰則はありませんが、稟議での説明根拠になります。

Q. 木材利用促進の日とは何ですか。

A. 同法第九条が定める日で、10月8日です。あわせて10月1日から31日までが木材利用促進月間とされています。十と八を組み合わせると「木」になることに由来します。

Q. CO2削減量として報告書に書ける数値はもらえますか。

A. 当社は国産木材のご提供量に応じて植樹を行い、カーボンニュートラル貢献量証明書を発行しています。CO2固定量と植樹による吸収量を、林野庁が公表している計算方法に基づいて算出し、裏面に木材の産地明細を記載しています。ご提供量が一定に満たない場合は植樹をお付けしないことがあります。

Q. 賃貸オフィスでも木質化できますか。

A. 置き家具による方法であれば可能です。原状回復義務のある区画では、内装仕上げや造作を伴う方法は退去時の費用に直結します。テーブル・ベンチ・収納・可動間仕切りのように持ち出せるもので木の面積を増やすのが現実的です。

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出典(一次情報)

※本ページは2026年10月8日時点で条文および公表資料を確認して作成しています。法令の適用は建物の用途・階数・規模・設置方法により異なり、最終的な判断は特定行政庁が行います。当社が個別の建物について適法性を保証するものではありません。